雑木林の美しい五十人山

 【年月日】  1994年12月25日
 【パーティ】 単独
 【タイム】  葛尾中学校前(9:09)−五十人山北峰(10:33)−湯ノ平(11:30)
 【地形図】 常葉、浪江

鎌倉岳から五十人山
 あぶくま保養センター(要田温泉)は、あちこちに出ている看板が大きい割には小さな宿で、風呂も小さかった。
 泉質は「単純鉄冷鉱泉」とあり、パンフレットには「金色の水」と書いてあるが、赤茶色を帯びたお湯にゴミ状の湯の花がまじっている。
 しかし温泉はこれで正しいのだ。

 この日の宿泊客はたったの7人で、従業員の数とほぼ同じだ。
 夕食は寒い大広間で食べた。他の客たちは地元のなまりで会話していた。

 本当になにもないので百円入れてテレビをつけ、ばかばかしい番組をしばらく見て8時過ぎに寝た。
 部屋の外でときおり磐越東線のディーゼルカーがうなりをあげて走っていた。

 8時過ぎに宿を出、葛尾村の五十人山に向かった。
 湯ノ平登山口に大きな看板があったので、ここにMTBを置き、葛尾中学校の近くの路上に自動車を停めて歩き始めた。

 葛尾村健康増進センターという建物を過ぎるとちょっとした駐車スペースがあり、葛尾村中央公園という看板。
 未舗装の林道を少し行った先が、五十人山登山道の入口だった。

 地形図で見たとおり、とてもゆるやかな林間の登りだ。
 道の左はアカマツの植林、右は雑木林。
 すぐに二合目の道標を見る。ここは村か中学で整備したものか、木の種類を示す名札があちこちにかけられている。
 下部で見たのはウリハダカエデ、アセビ、コナラ、ミズナラ、クリ、リョウブ、センなどだった。
 ウリハダカエデとセンはここの登りで新しく覚えた木だ。
 ウリハダカエデは幹に独特の模様があり、センはとげがある。

 四合目を過ぎ、少し下ると前方に山頂部が望まれる。
 このあたりからアカマツ林がなくなり、雑木林になる。
 しばらくは4〜5年生のヤブっぽい林だが、やがてキノコ狩りに好適そうなすばらしい雑木林となる。
 五合目から七合目にかけてヤマナシ、ミズキ、ヤマザクラ、ホオ、クリ、イヌブナ、セン、アサダ、アオダモ、コシアブラ、ブナ、ウルシ、エンジュ、シデなどを見る。

 アサダは松に似た裂け目のある樹肌の木で、アオダモはイヌブナに似た灰色の樹肌の木である。
 落葉期のコシアブラの特徴はは細かい吹き出物のようなものが幹にたくさんついている点である。
 ウルシは太くなると若いコナラによく似てくるので注意が必要だ。
 シデは樹肌はクリに似るが幹がねじれたようになっているのですぐにわかる。
 ヤマナシは芽が刺状になっている。

 八合目を過ぎるとタラノキやマンサクが目立つ、やや荒れた感じの林。
 鞍部の芝地から、まずは電波塔の立つ三角点に行ってみる。

 開けたところだが黒い雲がたれこめており、まわりはあまりよく見えない。
 風が強いのですぐに下り、今度は北峰に登ってみる。
 こちらはツツジの中に大石を配した自然の庭園でなかなか風情がよい。
 「弘法大師 田村麻呂霊」と彫られた大きな石の前に祠があるが、ちょうど風がこないところなのでそこでザックをおろし、コーヒーを沸かす。

 その大石に裏から登ってみると、さえぎるものはなにもなく、日山、竜子山、移ヶ岳、鎌倉岳などが望まれる。
 祠の前には、例によって弘法大師や坂上田村麻呂に関する五十人山の由来を書いた看板が建てられていた。

 下山は登ってきた方向とは逆に北への道をとる。
   はじめは雪を敷いた美しい雑木林だが、すぐに砂利を敷いた風情のない階段道。
 電波塔のあるピークからはやや荒れた小沢沿いの山道。

 整備された水場を過ぎ、30分ほどでMTBを置いた湯ノ平バス停に着いた。